データ分析記事 / 雨の投票日は本当に投票率を下げるのか——気象データで実際に計算した(r=−0.19)
雨の投票日は本当に投票率を下げるのか——気象データで実際に計算した(r=−0.19)
気象庁の観測データを9都市×7回の衆院選で集め、投票率との相関を実際に計算。「雨の日は投票率が下がる」という通説を、弱いながらも支持する結果に——ただし台風直撃の2017年も、乾ききった2014年も、通説どおりには動かなかった例外を正直に添える。
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「投票日が雨だと投票率が下がる」——政治学でもたびたび検証されてきた仮説を、実際の気象データで検証した。気象庁の観測データベース(過去の気象データ検索)から、全国9都市(札幌・仙台・東京・金沢・大阪・広島・高知・福岡・那覇)の実施済み衆院選7回すべての投票日の日降水量を取得し、同じ都市が属する都道府県の実際の推定投票率と突き合わせた。9都市×7回=63件のペアで相関係数を計算している。
63地点×選挙で見た相関
r = -0.192
相関係数(都道府県別)
n=63
53.6%
雨あり(1mm以上)平均投票率
n=31
55.3%
雨なし平均投票率
n=32
降水量1mm以上を記録した地点・年の平均投票率は53.6%、降水がなかった地点・年は55.3%で、その差は約1.7ポイント。相関係数r=-0.19は統計的には「弱い」部類に入る——投票率の変動の大部分は天気以外の要因(選挙の争点、地域の政党地盤など)で説明される、ということでもある。
データを表で見る
| 地点・回 | 降水量(mm) | 推定投票率 |
|---|---|---|
| 札幌・2009年 | 0 | 74.6% |
| 仙台・2009年 | 2.5 | 65.5% |
| 東京・2009年 | 16 | 59.6% |
| 金沢・2009年 | 0 | 74.7% |
| 大阪・2009年 | 0 | 63.1% |
| 広島・2009年 | 0 | 68.3% |
| 高知・2009年 | 1 | 72.0% |
| 福岡・2009年 | 0 | 65.0% |
| 那覇・2009年 | 2.5 | 57.6% |
| 札幌・2012年 | 13.5 | 58.2% |
| 仙台・2012年 | 0 | 53.0% |
| 東京・2012年 | 0.5 | 55.4% |
| 金沢・2012年 | 0.5 | 59.7% |
| 大阪・2012年 | 0 | 54.0% |
| 広島・2012年 | 0 | 55.1% |
| 高知・2012年 | 0 | 54.2% |
| 福岡・2012年 | 0 | 54.0% |
| 那覇・2012年 | 1 | 50.7% |
| 札幌・2014年 | 0.5 | 55.7% |
| 仙台・2014年 | 0 | 47.4% |
| 東京・2014年 | 0 | 49.2% |
| 金沢・2014年 | 27.5 | 46.8% |
| 大阪・2014年 | 0 | 46.9% |
| 広島・2014年 | 0 | 48.4% |
| 高知・2014年 | 0 | 51.7% |
| 福岡・2014年 | 0 | 45.4% |
| 那覇・2014年 | 0 | 48.2% |
| 札幌・2017年 | 0 | 60.3% |
| 仙台・2017年 | 83.5 | 52.1% |
| 東京・2017年 | 147.5 | 50.7% |
| 金沢・2017年 | 82 | 57.7% |
| 大阪・2017年 | 174 | 46.5% |
| 広島・2017年 | 84.5 | 49.8% |
| 高知・2017年 | 84 | 53.2% |
| 福岡・2017年 | 4.5 | 51.5% |
| 那覇・2017年 | 10.5 | 53.9% |
| 札幌・2021年 | 0.5 | 57.9% |
| 仙台・2021年 | 0 | 54.7% |
| 東京・2021年 | 2 | 55.2% |
| 金沢・2021年 | 0 | 55.7% |
| 大阪・2021年 | 1 | 54.1% |
| 広島・2021年 | 1.5 | 51.3% |
| 高知・2021年 | 9 | 57.0% |
| 福岡・2021年 | 0 | 50.5% |
| 那覇・2021年 | 0 | 53.5% |
| 札幌・2024年 | 0 | 53.5% |
| 仙台・2024年 | 2 | 50.2% |
| 東京・2024年 | 4 | 53.9% |
| 金沢・2024年 | 22 | 52.5% |
| 大阪・2024年 | 2.5 | 50.6% |
| 広島・2024年 | 7.5 | 45.9% |
| 高知・2024年 | 1 | 49.0% |
| 福岡・2024年 | 7 | 49.5% |
| 那覇・2024年 | 0 | 48.7% |
| 札幌・2026年 | 10 | 54.8% |
| 仙台・2026年 | 0 | 54.0% |
| 東京・2026年 | 4.5 | 57.8% |
| 金沢・2026年 | 8.5 | 52.4% |
| 大阪・2026年 | 0.5 | 53.1% |
| 広島・2026年 | 8.5 | 47.3% |
| 高知・2026年 | 0 | 50.8% |
| 福岡・2026年 | 0 | 52.0% |
| 那覇・2026年 | 1 | 53.0% |
2017年衆院選:台風直撃でも投票率は「並」だった
最も分かりやすい外れ値は2017年10月22日——台風21号(Lan)が日本列島を直撃した投票日で、東京147.5mm、大阪174.0mmという記録的な大雨を観測した。ところがこの年の実際の推定投票率は52.7%で、12回の中で突出して低いわけではない(最低は2019年参院選の48.8%、2014年衆院選の50.3%)。記録的な大雨という極端な条件でも、投票率が壊滅的に下がったわけではなかった。
ただし2017年の9地点を並べると、方向としては通説どおりの並びも見える。ほぼ唯一雨を免れた札幌(0mm)の推定投票率が60.3%と9地点中最高で、最も降った大阪(174mm)が46.5%と最低——この2地点の差は13.8ポイントに達する。一方で82mm降った金沢が57.7%と2番目に高いなど、同じ大雨の中でも地点差は大きい。降水は投票率を動かす要因の一つではあるが、地域の政治的文脈(その選挙区が接戦かどうか、地元候補の有無など)に簡単に上書きされる程度の要因、というのがこの分布の実像に近い。
逆に2026年2月8日は全国的な冬の大雪(東京で積雪5cm、広島で14cmなど)に見舞われた投票日だったが、この年の推定投票率(53.6%)は前回2024年(51.6%)よりむしろ高い。荒天が必ず投票率を押し下げるわけではないことを、この2つの実例は示している。
正直な結論:関係はあるが、決定的ではない
もう一つの反例も正直に挙げておく。2014年衆院選は9地点中7地点で降水ゼロ(例外は金沢の27.5mmと札幌の0.5mm)と広い範囲で乾いた投票日だったが、全国推定投票率は50.3%と、台風直撃の2017年(52.7%)をむしろ下回る7回中最低だった——晴れれば投票率が上がる、という関係も成り立っていない。
全国レベルの平均(9都市の平均降水量 vs 全国投票率、n=7)で見ても相関係数は-0.22と同程度の弱いマイナスの相関にとどまる。「雨の日は投票率が下がる」という通説を、このサイトの実データはゼロにはしないが、大きく後押しもしない——弱く、しかし方向としては一貫したマイナスの相関、というのが実データから言える範囲だ。
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