データ分析記事 / 民主党旋風の2009年でも自民41議席は揺るがなかった——鉄板区ランキング

石破茂
鳥取1区

岸田文雄
広島1区

安倍晋三
山口4区

菅義偉
神奈川2区
民主党旋風の2009年でも自民41議席は揺るがなかった——鉄板区ランキング
2009〜2021年の5回の衆院選(現行289区割りで実際に比較できる範囲)で、一度も勝者の政党が変わらなかった「鉄板区」は289区中43区。うち41区が自民党——政権交代という最大の「風」が吹いた2009年ですら、この41区は自民が守り切った。地盤の分布を実データで確かめる。
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2009年から2021年までの衆院選は、実は日本の政治地図が最も大きく動いた12年間だった。2009年に民主党が政権を取り、2012年に自民党が奪還し、その後は自民一強が続いた——という「地殻変動」の年に、それでも一度も勝者の政党が変わらなかった選挙区がどれだけあるのかを、実際の候補者別得票データで数えてみた。
鉄板区は289区中43区、うち41区が自民党
43区
5回連続で同じ政党
分析対象 289区中
41区
自民党の鉄板区
2区
自民党以外
社民1・無所属1
5回全部で区割りが一致する289区のうち、43区(約15%)は2009〜2021年の5回すべてで同じ政党が勝ち続けた。うち41区が自民党。政権交代が起きた2009年、自民が下野した中でもこの41区は自民が守り切っている——つまりこれらは「風」が吹いても揺るがない、正真正銘の地盤区だと言える。
データを表で見る
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 自由民主党 | 41区 |
| 無所属・その他政党 | 1区 |
| 社会民主党 | 1区 |
さらに43区のうち28区では、政党どころか当選した候補者名まで5回とも同一だった(届出上の候補者名の表記が完全一致する場合のみ数えた保守的なカウント。漢字・ひらがなの表記を選挙ごとに変えた候補は含まれない)。顔ぶれを見ると、鳥取県第1区の石破茂氏、広島県第1区の岸田文雄氏、山口県第4区の安倍晋三氏、神奈川県第2区の菅義偉氏——2009年以降の自民党総裁経験者の名前が並ぶ。ほかにも神奈川県第11区の小泉進次郎氏、同15区の河野太郎氏、和歌山県第3区の二階俊博氏、岡山県第5区の加藤勝信氏など、閣僚・党役員経験者の選挙区が多くを占める。個人名まで固定された地盤の存在が、実データからそのまま読み取れる。

写真: 首相官邸ホームページ (CC BY 4.0)

写真: 首相官邸 (CC BY 4.0)

写真: 内閣官房ホームページ (CC BY 4.0)

写真: 内閣府ホームページ (CC BY 4.0)
典型例:北海道7区、5回とも同じ候補・同じ政党
北海道7区は2009年(民主党が308議席を取った歴史的な政権交代選挙)ですら自民党の伊東よしたか氏が勝っている。以後2012・2014・2017・2021年も同一候補が勝ち続け、実データで確認できる限りでは2024年(新区割りだが同一選挙区番号)も同じ結果だった。ただし「安泰の連続」だったわけではない:得票率の推移を見ると、2009年は49.7%(次点との差わずか0.5ポイント)、2014年に至っては次点の鈴木たかこ氏(民主党)との差が225票(0.14ポイント)しかなかった。それが2017年には得票率66.6%・差33.2ポイントまで広がっている——「鉄板」の中身は盤石な大勝の連続ではなく、薄氷の勝利を含めて勝ち切り続けた記録だ。
自民党以外で唯一の5回連続は沖縄県第2区(社民党)。2009〜2017年の4回はテルヤ寛徳氏が、2021年は新垣クニオ氏が引き継いで勝っており、候補者が交代しても政党の地盤が維持された、43区の中でも珍しいパターンだ(他の42区は自民党または無所属個人)。沖縄の基地問題を背景にした強固な支持基盤が、全国的な政党の浮き沈みと無関係に選挙区の勝敗を決めてきたことがうかがえる。もっとも2021年の新垣クニオ氏の勝利は次点との差6.4ポイントで、2009年の24.6ポイント差からはかなり接近されている。
無所属としての「鉄板」枠は静岡県第5区(細野豪志氏)。政党を移り変わりながらも同一候補が5回すべてで勝ち続けたケースで、しかも5回とも次点に17ポイント超の差をつけている。政党名ではなく候補者個人への支持が固定化した例と言える。

写真: 首相官邸ホームページ (CC BY 4.0)
「鉄板」にも薄氷の一回がある——最小マージンで見る43区
43の鉄板区それぞれについて、5回の中で最も危なかった一回(最小の当落差)を取り出すと、「鉄板」の均質でなさが見えてくる。最も際どかったのは上で見た北海道7区の2014年(225票差)だが、それに次ぐのが神奈川県第2区——のちに首相となる菅義偉氏が、政権交代選挙の2009年に三村和也氏(民主党)に548票差(0.19ポイント)まで迫られていた。鳥取県第2区の赤沢亮正氏も同じ2009年に湯原俊二氏に626票差まで詰められている。
データを表で見る
| 項目 | 値 | 補足 |
|---|---|---|
| 北海道第7区(2014年) | 0.14pt | 伊東よしたか vs 鈴木たかこ(民主党)・225票差 |
| 神奈川県第2区(2009年) | 0.19pt | すが義偉 vs 三村和也(民主党)・548票差 |
| 鳥取県第2区(2009年) | 0.37pt | 赤沢りょうせい vs 湯原俊二(民主党)・626票差 |
| 愛媛県第1区(2009年) | 1.03pt | 塩崎やすひさ vs ながえ孝子(民主党)・2,768票差 |
| 東京都第11区(2009年) | 1.25pt | 下村博文 vs 有田芳生(新党日本)・3,474票差 |
| 岡山県第1区(2009年) | 1.78pt | あいさわ一郎 vs 高井たかし(民主党)・4,076票差 |
| 千葉県第11区(2009年) | 1.80pt | 森英介 vs 金子健一(民主党)・4,230票差 |
| 石川県第2区(2009年) | 1.82pt | 森喜朗 vs たなか美絵子(民主党)・4,469票差 |
上位8区のうち、北海道7区(2014年)を除く7区で「最も危なかった一回」は2009年——つまり多くの鉄板区にとっても、政権交代選挙は実際に最大の危機だった。それを凌ぎ切った選挙区だけが、この43区に残っている。
対照的に、一度も接戦にすらならなかった選挙区もある。5回の最低得票率が最も高かったのは宮崎県第3区(ふるかわよしひさ氏)で、最も苦しい年ですら得票率67.4%。次いで群馬県第5区(おぶち優子氏、最低64.9%)、山口県第4区(あべ晋三氏、最低64.3%)と続く。これらの選挙区では2009年の「風」ですら、得票率を6割強までしか削れなかった。

写真: 首相官邸ホームページ (CC BY 4.0)
2024年も勝ち続けたか——参考データとしての第50回
2024年(第50回)は新区割りのため本編の5回連続カウントには含めていないが、都道府県の議席数が変わらず選挙区番号が比較の参考になる範囲に限れば、43鉄板区のうち24区が対照可能で、そのうち19区(79%)は2024年も同じ政党が勝っている。自民党が小選挙区289議席中132議席まで後退した2024年の逆風下でも、鉄板区の大半は持ちこたえた——ただしこれは区割り変更をまたいだ参考値であり、厳密な同一選挙区の比較ではないことは明記しておく(残りの19区は県の議席数自体が変わったため比較対象外)。
鉄板区は地方に偏っているが、都市部にもゼロではない
国勢調査の人口密度で「都市」「地方」に分けると、289区全体では都市部が145区・地方が144区とほぼ半々。ところが43の鉄板区のうち「都市」に分類されるのは9区(約21%)だけで、残り34区(約79%)は地方区に集中している。東京都・神奈川県にも合わせて6区の鉄板区があり皆無ではないが——東京都第11区(下村博文氏)や神奈川県第11区(小泉進次郎氏)のように大都市圏でも個人地盤が固定化した例はある——比率で見れば鉄板区は明確に地方に偏っている。大都市圏は次の「万年接戦区」の記事で見るとおり、政党の浮き沈みがそのまま議席の変動に直結しやすい構造にある。
このランキングの鉄板区のうち14区は「注目選挙区」としても特集されています
当選者の出典付き発言・実写真つきの詳細プロフィールを読めます(district名で対応づけ。2022年の区割り改定で選挙区番号自体は前後の地図で異なる場合があるため、番号ではなく選挙区名で照合しています)。
この記事の数値はすべて、総務省公表の候補者別・市区町村別得票や2020年国勢調査などの公的データから、当サイトが独自に集計・計算したものです。チャートも既存の描画ライブラリではなく、このサイト独自のコンポーネントで生成しています。 手法の詳細は各セクションの注記、サイト全体の前提・データの範囲・既知の制約は 計算方法ページ に集約しています。
